症例報告の重要性

 Evdence Informed Practice ピラミッドという概念をご存知ですか?

 リハビリテーションの世界はEvidenceが求められています。しかしながら、我々の日々の診療においては、大規模研究の結果だけでは解決できないことが多くあります。Evidence Informed Practice ピラミッドの概念では、研究の中でも症例報告が重要な位置づけにあることがわかります。

 今回、レジデント制度を考える上で、私なりに症例報告や症例検討について再考しました。まずは包括的リハビリテーションの実践の観点から症例検討は重要な位置付けにあるということを再認識しました。また、症例報告は臨床的思考過程や研究能力を向上させるだけでなく、臨床における意思決定能力を高めるために必要であるという結論に到達しました。

 私の考える症例検討というのは、包括的リハビリテーションの実践の上でどうしても重要になります。理学療法としての細かなスキルや知識というよりも、症例の全体像を捉え、そして運動療法のみならず、薬物療法や生活指導、栄養指導なども含めて総合的に症例を捉えていけるようなトレーニングが必要です。そのため、定期的に症例をプレゼンテーションし、症例の包括的な問題点を常に明確にするような習慣を養うことが必要だと思います。

 また、症例報告はEvdence Informed Practice ピラミッドの概念からも重要なわけですが、教育の観点では非常に重要であると考えております。我々は保険診療を行っているので、当然そこに根拠が必要になります。もちろん、根拠が乏しくても患者さんにとって最善の治療もあるので、そのことを否定するわけではありません。しかしながら、エビデンスの出にくいこのリハビリテーションの世界において、高いエビデンスが保障されていることについては、第一選択として実施すべきことであるということを認識する必要があります。Evdence Informed Practice ピラミッドでも述べられているのは、あくまでベースにあるのはシステマティックレビューなどエビデンスレベルの高い事柄であり、それを十分に解釈した上で、症例報告レベルの治療の実践が成立すると捉えることができます。ですので、教育ということを考える上で、このようなEvdence Informed Practice ピラミッドを十分に理解すること、研究に精通することが極めて重要であると考えております。

 どうしても経験年数を重ねると個人の意見が色濃くなりやすい世界ですが、それが間違っている可能性も決して少なくありません。なので、教育をする上では、エビデンスの確認、その上で症例報告レベルの治療を教育していくという流れが必須であり、そのことを教育側が十分に認識しておく必要があります。私が10年を経過する短い臨床経験の中で、トップランナーと関わってきて、これはとても重要であると感じました。

 このことを、レジデントにはしっかりと伝えていきたい。それが今の私のコンセプトです。臨床、教育、研究を2-3年でめいいっぱい感じたい人は、是非我々のレジデント制度を利用して頂きたいと考えております。